米議会、住宅法案にCBDC禁止条項を盛り込み2030年末まで延長 トランプ大統領の署名へ

米連邦議会は、連邦準備制度理事会(FRB)による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を2030年まで禁止する法案を上下両院で可決した。下院が火曜日に可決したことで手続きが整い、法案はトランプ大統領の署名に回る。 可決されたのは「21st Century ROAD to Housing Act(21世紀ロード・トゥ・ハウジング法)」で、下院は超党派の大差で通過させた。上院でも前日に賛成多数で可決していた。CBDCを巡る条項は、FRBおよび各地区連銀によるCBDCの「発行、創設、または促進」を禁じ、期限は2030年12月31日までとする。上院銀行委員会のティム・スコット委員長は"きょう議会は、アメリカン・ドリームに向けて努力する家族にとって大きな勝利を届けた"と声明で述べた。 CBDC禁止は、住宅の負担可能性を高める包括パッケージの一部として盛り込まれた。同法は、一戸建て住宅市場における法人家主の集中に焦点を当てるほか、開発許認可の迅速化や住宅都市開発省(HUD)プログラムの更新を掲げる。法案策定には、下院金融サービス委員会のフレンチ・ヒル委員長とマキシン・ウォーターズ筆頭理事、上院銀行委員会のスコット委員長とエリザベス・ウォーレン筆頭理事が関与した。下院は5月に修正案を396対13で可決し、上院が修正点を取り込んだ最終調整文書として成立に向けた手続きを進めた。両院の不一致を解消する合意は先週まとまり、数カ月に及んだ調整遅延に区切りが付いた。ヒル氏はこの過程を"ワシントンはまだ機能する"証左だと語った。 CBDC条項の追加は、下院共和党の支持固めが狙いとされる。長年にわたり反CBDC法制を主導してきた下院多数党院内幹事(ウィップ)のトム・エマー氏は、FRB発行のデジタル通貨が米国民の金融プライバシーを損ない、政府に取引への過度な統制権限を与え得ると一貫して主張してきた。上院でも賛成多数で可決されたことで、民主党側にも相当の支持があることが示された。FRB発行の小売型デジタルドルを法律で禁じるのは、米国史上初の事例となる。 今回の禁止は、今後数年の米国デジタル決済の制度設計の一角を固める。財務長官のスコット・ベッセント氏は、トランプ大統領が2025年にGENIUS Actに署名した際、"デジタル資産とドル覇権にとって画期的な瞬間"と位置付けた。ステーブルコインの制度整備とCBDC禁止を合わせて見ると、ワシントンの"デジタルドル"政策の軸は明確になる。政権が後押しするのは、GENIUS Actの枠組みで規制される民間のドル建てトークンであり、FRBは競争の土俵から外れる。 CoinGeckoによれば、時価総額が3080億ドル超のステーブルコイン市場のうち、CircleのUSDCとTetherのUSDTが合計で約84%を占める。銀行、決済ネットワーク、フィンテック各社がステーブルコイン決済のレールを組み込む局面でも、少なくとも2030年末まではFRB発行のデジタルドルが競合として登場しない見通しだ。複数年を前提にベンダー選定や決済レールの判断を行う機関投資家向け決済部門にとって、法定の禁止期間は競争環境を見通す上での重要なアンカーとなる。 一方、デジタル資産の市場構造を広く扱うClarity Actは別路線で進み、8月休会前の上院本会議採決に向けた動きが続く。 禁止措置は恒久ではなく、2030年末で失効する。下院保守強硬派の一部は恒久禁止を求めたが、最終的に4年のサンセット条項が両院合意の妥協点となった。2030年以降は将来の議会と政権が再検討する余地が残るものの、上院での賛成多数は超党派の幅広い連合を示しており、方針転換には政治状況の大きな変化が必要になりそうだ。 なお、法案が禁じるのはFRBおよび地区連銀によるCBDCに限られ、商業銀行や民間企業が独自のデジタルドル商品を開発することを制限するものではない。トランプ大統領は署名する見通しで、マイク・ジョンソン下院議長とホワイトハウスは、両院調整の過程を通じて住宅法案を支持してきた。